交差点
聞こえたのはふたつの音
瞳に映したのはふたりの男
足が止まる
左半身が私を止める
辺りを見渡す。
握る鞄の皮音が響く様に、己に言い効かす中年リーマン。冷めた眼差しでヒソヒソ話、楽しそうな女子高生。じっと、ただ佇むその瞳から流れる涙に意味などないのでしょう。
そして私は再び歩き出す。
心は動かさず、足だけを動かす
交差点を交わし、人を交わし、
走り出す。
直面する風が痛い。
ぶつかる人の視線が痛い。
そんなこと以上に、
心が痛い。
加速していく身体に作用する心が痛い。
いたたまれなかった。
あの音に、人に、人達に、向き合えなかった私の弱さに。