saga00’s diary

私は私に憑依される

交差点

 

聞こえたのはふたつの音

瞳に映したのはふたりの男

 

 

足が止まる

左半身が私を止める

 

辺りを見渡す。

握る鞄の皮音が響く様に、己に言い効かす中年リーマン。冷めた眼差しでヒソヒソ話、楽しそうな女子高生。じっと、ただ佇むその瞳から流れる涙に意味などないのでしょう。

 

 

そして私は再び歩き出す。

心は動かさず、足だけを動かす

交差点を交わし、人を交わし、

走り出す。

 

直面する風が痛い。

ぶつかる人の視線が痛い。

そんなこと以上に、

心が痛い。

加速していく身体に作用する心が痛い。

 

いたたまれなかった。

あの音に、人に、人達に、向き合えなかった私の弱さに。