乗替列車
「今朝、母が死んだらしい。」
その言葉が、何度も何度も繰り返し巡る。
am6:45
日が昇りはじめる
見慣れぬ服、見慣れぬ髪が風に揺れ
確かに乱反射する薬指に目を細めた
駅を降りると見慣れた場所
過ぎる景色と、振り返るこれまで
踏みしめる歩幅と共に
思い出すには容易すぎる
扉を開けるとそこには
集まる視線と、思わず息を呑む人々
それを背に淡々と目的地へ向かう
長髪が揺れる。
そこには、私の知らない女性の姿と、私の愛すべき母の姿があった。
誰しもがその微笑みに涙するそんな顔立ちと
彼女そのものが歴史だと証明する、痛いけな美しさがそこにはあった
箱を開け彼女に触れる
会場のどよめきと共に、私は今にも折れそうな左手を支えながらポケットに手をかける
待たせてごめんね。
ずっと待っててくれてたんだよね。
でも私こんなんだからさ、また待たせちゃう。
だからこれは約束の証。
必ず迎えに行くから、だからもう少しだけ私と一緒にいてください。
ほんの一時、二人だけの式辞が終わる
その頃にはいつの間にか
会場が静けさに包まれていた
ふと、誰かが言った
「 _____は、生きてる...?」
今日はあなたと私の記念すべき日
そして今日が、私とあなたの
はじまりの日